〜番外3 駆け抜ける夏の喧騒〜
夏。
あらゆるモノが活発に動く季節。
その暑さと比例するかのように。
ミーンミンミン…。
ジーワジーワ…。
まだ太陽も十分に昇りきらない早朝。
長い暗い地中での生活を終え、光溢るる大空へと飛び出すべくセミたちが孵化をする。
そして、残りの短い命の炎を燃やし尽くそうと鳴いている。
地上にいられるのは、地中での時間に比べればほんの短い時間。
それでも彼らはその短い時間を懸命に生きている。
太陽が高く昇る頃になると、そんなセミの鳴き声と、うだるような暑さがやってくる。
空は突き抜けるような青空。
何処までも広がる大空。
そんな空に私たちを見下ろす入道雲が広がっている。
ゴロゴロゴロ…。
遠く入道雲から発せられる雷鳴。
入道雲が太陽を隠し、あたりは暗くなる。
しかし、その暗さは梅雨のときの暗さとは違う。
確かに太陽は雲に隠れている。
しかし空全体が雲に覆われているわけではない。
夕方のそれとはまた違った薄暗さ。
ポッ、ポッ…。
ドザアァァ…。
その入道雲で暗くなった地面に一気に落ちてくる雨。
「バケツを引っくり返した様な」雨が落ちてくる。
太陽の光がささなくなったことと、滝のような雨はあたりを一気に涼しくする。
大雨の飛沫が光を乱反射させ、あたりはさっきよりほんの少し明るくなる。
流れ込んでくる冷ややかな空気は、先ほどまでの暑さを思わせない。
そんな大雨も長くは降り続かない。
しばらくすると、雨が止み、再びセミの声が聞こえてくる。
しかし、それもしばらくの事。
やがて太陽は雲でなく地平に隠れる。青かった空は赤くなる。
今まで聞こえていた騒々しいセミの声も今は静かだ。
カナカナカナ…。
代わりに聞こえてくるのはヒグラシの鳴き声。
もう昼の暑さもすっかり引いている。
後はただ赤い空が深い紺色の空に変わっていくだけ。
空が完全に闇に包まれた頃…。
ドーン!
ドドン!ドン!ドン!
再び喧騒が戻ってくる。
闇の空に響く轟音。闇の空を明るく染め上げる色鮮やかな花。
花火。
人々は思い思いの気持ちで夜空の花火を見上げる。
ある人は涼を求めて、またある人は過ぎ行く夏を惜しむかのように。
ほんの一瞬の花。
しかしその瞬間、誰もがその花に心を奪われる。
花火も終わると、夜は本来あるべき静けさに戻る。
さっきまでの轟音が嘘のようにあっさりと静かになる。
駆け抜ける夏。
刹那の喧騒。
騒がしく始まり、いつのまにか静かに終わってる。
そんな繰り返される1日は夏そのものを表しているかのようだ。
瞬間、瞬間で懸命に生きるモノたちの季節。
夏。
騒がしくも、しかし大きな命の躍動がそこにある季節。
〜番外3 駆け抜ける夏の喧騒〜 終わり
2003/08/16