〜番外6 秘奥の少女〜
オレはこの館で住みこみで働く小間使い。
館の雑用が主な仕事だけど、館の奥には入ってはいけない。
この館には多くの来客がある。
それも豪華な洋服に身を包んだ貴族様だ。
雑用の一環で、貴族様が奥に向かうとき、オレはドアボーイのような事をする。
そのときだけ、オレはほんの少し、館の奥に入れる。
奥にある広間に貴族様を案内して、ドアを開けたら、オレの役目は終わり。
すぐに戻らなくてはいけない。
こんなトコロをうろついているにが見つかれば、館から追い出されかねない。
でも、どうしても、そのドアの奥が見たくて、
オレはいつもドアを閉めるときにこっそり広間の中を覗き見る。
その広間で、貴族様を迎えるのは豪奢なドレスに身を包んだ女の子。
笑顔で貴族様を迎え、さらに奥の部屋に誘う。
その奥で何がされているかは、なんとなくわかっていた。
女の子はオレと同じ位か、もう少し下くらい。
そんな彼女達を見ていると、オレは生まれた村での事を思い出す。
オレが今よりもう少し小さかった頃。
今はもういない両親と生まれた村で暮らしていた頃。
オレには幼馴染がいた。
少しオレより年上だけど、村の中で一番年が近い少女。
いつも山や川で遊んでいた。
きっとオレはそのコの事が好きだったんだろう。
しかしある日。
都からやって来た貴族様が彼女を連れて行った。
今まで見た事もない馬車に乗って、今まで見た事も無いドレスに身を包み。
それはまるでお城の姫様のように綺麗で。
でも、オレの知っていた彼女じゃないようで。
そのまま彼女は、オレの手の届かないところに行ってしまった。
オレが今よりもう少し小さかった頃の事。
両親が死んだ後は、ここで住みこみで働かせてもらっている。
あの時なにもできず、ただ見ているだけだったオレ。
そして、今もただ見ているだけのオレ。
悔しさとも苛立ちともつかない、ヨクワカラナイ気持ち。
あの部屋の奥。
今日も貴族様を奥の広間へと案内する。
ドアの隙間から見える、貴族様を迎えるための少女の笑顔を見るたび、オレは自分がイヤになる。
幼馴染を見つけるためにここにいるのか。
その幼馴染と似たような境遇の彼女らに幼馴染を重ねて、
もしくは幼馴染の代わりとして彼女らを見るためにここにいるのか。
オレはどうしたいんだろう?オレはドコへ行きたいんだろう?
ただ空回りするだけの俺のココロは、この館からどうにもできないでいる…。
〜番外6 秘奥の少女〜 終わり
2004/08/10