〜壱拾壱 終わりなき旅路〜
ザッ、ザッ、ザッ…。
一歩踏み出すたびに、ススキが掻き分けわれる軽い乾いた音を立てる。
サワ、サワ、サワ…。
腰の高さほどもあるススキが風に揺られて涼やかな音を立てる。
風が吹くたびにゆれるススキはまるで大海原の波のよう。
夕日に紅く染まった空に、黄金色のススキの海原。
海原の底にあるはずの地面は、黄金色の波間に隠れてよく見えない。
このような何もない、どこまでも広がる平原。
例え踏みしめるべき大地が見えていようとも、導べがなければ正しく進む事は困難だろう。
導べもない、道なき旅路。
それはまるでヒトの一生の様。
よくヒトの生涯は旅に例えられる。
その旅路は決して平坦なものではない。
時にその道は険しく、時にその進むべき道を見失いさ迷う。
しかし、ヒトは前に進むことしかできない。道標もない、先の見えない旅路を。
リー、リー、リー…。
どこからか聞こえてきたスズムシの鳴き声。
ススキを揺らす風には、冷たいものが混じり始めている。
いつの間にか、空は紅から深い紺色の空へと変わっている。
そして、頭上には弧を描く青白き光の主。
地上を照らす月は何も言わずに、ただ地上を照らしているだけ。
いったいどれだけの旅人を見てきたのだろう。
旅人たちの旅路は辛く険しい。
しかし、先に進むためには、生きてゆくためには、その困難を乗り越えていかなければならない。
生きているモノにはその困難を乗り越えてゆけるチカラがある。
その先に、果たしてそれだけの価値があるものが待ち受けているかは、わからないのに。
それでも旅人は旅を続ける。
おそらく旅人にとって闇に浮かぶあの月も、旅の途中の希望となっていたのだろう。
月にとって、そんな事は関係ないのかもしれないが…。
頭上の月は、まもなく美しい真円を描く時期だ。
また今年も月への散歩をしに行こう。
〜壱拾壱 終わりなき旅路〜 終わり
2004/09/26