紫煙に思いを乗せて
煙草
俺は正直、タバコの煙ってのが苦手だった。
だから彼女には、できれば止めて欲しい、と何度か言ってきた。
ただ、俺自身あまり偉そうには言えなかった。
俺も彼女ほどではないにしろ、タバコを吸う人間に違いは無かったから。
煙が苦手なくせに、タバコを吸う。矛盾している。
自分の煙なら多少は我慢できるけど、人の煙はやっぱり苦手だ。
それにやっぱり俺は好きでタバコを吸っているわけではない。
理由は俺の外見。
少し童顔でガキくさく見える俺は、少しでも外見を変えてみたくてタバコを始めてみた。
確かに彼女の方がほんの少し年上だけど、「カワイイ」はないよなぁ…。
ふっとタバコの煙を吐く。
俺がタバコを吸う理由となった彼女はもうそばにはいない。
今では、古い知り合いでしかなくなっている。
でも俺は未だにタバコをすっている。煙が苦手なのは変わっていないけど。
あのときから俺は変わっていない。
外見も、彼女を他人としてしまった俺の性格も、そして…
「…未練…なのかな。」
俺の彼女に対する、未練たらしく残っている想いも。
時間は流れてゆく。煙のように。
しかし想いはそう簡単には消えてくれない。さしずめ…この吸殻のように。
流れてゆく煙を追って、空を見上げる。
ドコまでも澄んだ青い空。
その空の下のどこかで、今日、彼女は人生で一番の祝福を受けている。
俺の知らない誰かと共に。
「おめでとう…。」
煙と共にふっと口から出た言葉。
その煙の下には吸殻が残っていた…。
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珍しく書いた等身大な現代モノ短編です。
これは、
ORIGINAL WEBさんの
「あるひとつのお題で作品を書く」という企画に投稿した話です
(オリジナルウェブ管理人さんがご多忙のため、まだ掲載はされてませんが…)。
お題はイロイロあり、今回は「煙草」というお題で書いてみました。
現代モノは前からイロイロ案はあったんですが、なかなかまとめることもなくて。
今回はいい機会だったので、その案の中からひとつをまとめてました。
めったに書かない現代モノを書くいい機会になりました。
また別のお題ででも参加してみようかなぁ、と思っています。
2005/06/12